股関節の痛みや違和感
股関節の疾患と治療法
股関節は、歩行や体のバランスを支える重要な関節であり、日常生活やスポーツで頻繁に使われます。加齢や外傷、繰り返しの負担によって股関節に障害が生じると、歩行困難や痛みが発生し、生活の質(QOL)を大きく低下させることがあります。 ここでは、代表的な股関節の疾患とその治療法について解説します。
股関節の代表的な疾患と症状
変形性股関節症
概要
- 股関節の軟骨がすり減り、関節の変形が進行する疾患
- 加齢や先天性股関節脱臼(臼蓋形成不全)が原因となることが多い
主な症状
✅ 歩き始めや長時間歩いた後に股関節が痛む
✅ 股関節の可動域が制限され、しゃがむ動作が困難
✅ 進行すると安静時にも痛みが生じ、歩行が困難になる
治療法
保存療法:リハビリ・鎮痛薬・体重管理・装具療法
手術適応:強い痛みや歩行障害があり、保存療法で改善しない場合
股関節インピンジメント症候群(FAI)
概要
- 股関節の骨同士が衝突し、関節の可動域が制限される疾患
- スポーツや股関節の形態異常が原因となることが多い
主な症状
✅ 股関節の付け根の痛み(特に屈曲・回旋時)
✅ 長時間座っていると痛みが悪化
✅ 進行すると関節唇損傷を引き起こし、股関節の変形につながる
治療法
保存療法:ストレッチ・リハビリ・鎮痛薬
手術適応:股関節の動きを妨げる骨の形状異常があり、痛みが持続する場合
大腿骨頭壊死症
概要
- 大腿骨の骨頭部分への血流が低下し、壊死(骨が壊れる)する疾患
- ステロイド使用歴やアルコール多飲がリスク因子
主な症状
✅ 股関節の突然の痛み(歩行や体重負荷で悪化)
✅ 進行すると股関節の変形が進み、歩行が困難になる
✅ 早期は無症状のこともあるが、壊死が進行すると激しい痛みが出る
治療法
保存療法:装具療法・鎮痛薬・リハビリ
手術適応:壊死が進行し、関節の破壊が生じた場合
股関節唇損傷
概要
- 股関節の軟骨(関節唇)が損傷し、痛みや不安定感が生じる疾患
- 股関節インピンジメントやスポーツでの過負荷が原因となることが多い
主な症状
✅ 股関節の引っかかる感じや違和感
✅ 歩行時や運動時の股関節の痛み
✅ 進行すると股関節の可動域が制限される
治療法
保存療法:リハビリ・鎮痛薬
手術適応:保存療法で改善しない場合
大腿骨頸部骨折
概要
- 転倒などにより、大腿骨の首の部分(頸部)が折れる骨折
- 高齢者の骨粗鬆症により発生しやすい
主な症状
✅ 股関節の強い痛みで歩行不能
✅ 患側の脚が短く見えることがある
✅ 寝たきりのリスクが高く、早期治療が必要
治療法
保存療法:原則として手術適応(保存療法は限られたケース)
手術適応:基本的に全例で必要(ねたきりにならないよう歩行能力を獲得するため)
まとめ
股関節の疾患は、進行すると歩行困難や生活の質の低下につながるため、早期の診断と適切な治療が重要です。
特に、変形性股関節症や大腿骨頭壊死症は、進行すると人工股関節置換術が必要になることがあるため、初期段階でのリハビリや保存療法が推奨されます。
また、大腿骨頸部骨折は高齢者に多く発生し、早期の手術が重要となります。